「なあなあ。ちょっと聞いてえな」
「あん?なんやの」
「ネットとかテレビとか見てるとな。
いろんな人がいろんな情報を流したり
言ったりしてるやろ」
「してるなあ。キリがないくらい」
「これが正しい、あれが正しい。
それは違ってこっちが本当だ、だの、
あれもこれも、もっともらしいって
なんとなく、なる」
「なるなあ。ぼくもなるわ」
「自分で調べろ、自分の頭で考えろ、
自分で判断しろ、ってばっかり
言うてる人もいる」
「ああ、いるわ。確かになあ」
「何がほんとうに正しいのか、
何を信じたらいいのか、
わからんようになるし」
「うんうん」
「それでも、そんな情報やらを
どうしても見てしまったり
あれこれに振り回されてしまったりする
自分にウンザリして、嫌んなるんよ」
「そんなん、見んときゃいいがな」
「それはわかってんの。
わかってても、って話なの!」
「むーー」
「キミにそう言われるのもわかってるわ。
ま、そんなことよりも。
そんでね。
しょうがないから、ぶっ飛ばしたんや」
「はん?」
「ぶわーーーー!て。ロケットつけて」
「ロケット?」
「そう。
ついつい見てしまう情報に
ロケットつけて。
情報を出してる本人にも
ロケット背負わせて
点火して、ぶわーーーー!て」
「えええ?」
「で、
ロケット宇宙の果てまで飛んでくの
ずーーーっと見届けんの。
見えんようになったら
『二度と来んなあああ!』って叫んで。
スッキリしたわ」
「アンタ頭だいじょうぶか」
「むしろだいじょうぶになったわ!
あくまでもイメージの中で、や」
「そら、そうやろうけど!」
「イメージでこういうふうに
嫌なものにロケットつけて
ぶわーーーーて飛ばしたら」
「うん」
「たったそんだけで
ホントに飛んでったわ」
「またまた。
そんなんで飛ぶかいな」
「や、ホントに飛ぶんよ。
頭の中から飛んでって
スッキリして
それから仕事に集中できたわ」
「へええ」
「仕事サクサクはかどって
なおさらスッキリしてな。
こんないいことないわ」
「そら結構なことや。
しかし、しかしな」
「うん」
「そんな、イメージの中で
ロケットつけて
ぶわーーーーて飛ばすだけって
そんなんで頭ん中から
嫌なものなくなってしまうかいな。
そんな都合のいい話」
「ま、いっぺん飛ばして
なくなったと思っても
そのうちまた戻ってくるわ。
そしたら、また飛ばす。
何回でも、いくらでも、飛ばす」
「ほお」
「なんせ、イメージの中のこと。
ロケットどんだけでも作れるわ。
いひひひひひ」
「こわいわ!」
「だからイメージの中でだけや!
安心せえ。
イメージの中でだけなら
どんな嫌なモノでも、どんな嫌な奴でも
どんだけでも飛ばせるわ
ぶわーーーーて」
「ふーん。それにしても
たったそんだけのことで」
「そうそう。
だからすぐにできるし
何回でもどんだけでもやれるし
繰り返しやるほど効果あるんや」
「そんなもんかいな」
「キミも、嫌なものもあるし
嫌な奴もいるやろ?」
「いる!いるわ!
マジで嫌や」
「飛ばしとけ」
「飛ばすわ」
「飛ばすだけじゃ足りんからな。
見えんようになるまで
最後まで見届けるのがミソやからな」
「お、おう」
「で、
『あースッキリしたわ!』でも
『っっっしゃああああ!!』でも
『二度と来んなああ!』でも
『ざまあみたかああ!』でも
なんでもいいわ。
スッキリするセリフを言っとく」
「言うんか」
「そう、言う。
そこまでやって、終わり」
「なんかおもしろそうな気がしてきたわ
いひひひひひ」
「そうやろ。ぶっ飛ばせ。
宇宙の果てまで」